小田原に移住したよ。

小田原移住日記

唐突な転職で小田原に引っ越した男の顛末

熱海伝説|締め出された人間と特殊恋愛

サッカー部の仲間と熱海旅行

小田原の近くには熱海がある。熱海には思い出がある。3年前、高校サッカー部時代の仲間と行った旅行だ。

メンバーはすーさん、フキー、さとし、こたに、僕の5人。すーさんの会社の保養所に、土日で1泊旅行に出かけた。

宿は居住者もいる大きなマンションのような施設。そのうち数部屋をすーさんの会社が保養所として借り上げているとのこと。

僕はその土曜日に予定が入ってしまったので、
夕食時に遅れて合流。宿は木の茂った森の中にあり、周りには民家も少ないが、自然が多くて良い感じだ。

みんなで仲良く夕ご飯を食べたあと、卓球で1時間ほど汗を流し、風呂へ。既に日は落ちていたが、大浴場には露天もあり、満喫できた。

風呂から上がり、着替えて脱衣所を出るとき、まだ着替えていたフキーが「俺タバコ吸ってから戻るよ」と言った。「わかった」と返し、フキ―以外の人間は部屋へと戻った。

部屋ではしょうもない話に花が咲く。一番の話題は「フキーの恋愛」だ。詳細はここでは書けないが、彼は当時の彼女と結構特殊な形態でお付き合いをしていた。それについてあーだこーだ言うのが当時の僕らサッカー部仲間での流行であった。その日も部屋に戻るやいなや、ビールを飲みながらその話。狂気の独身サトシ、離婚ファンタジスタ小谷の酒癖悪い2名を中心に、トークは留まることを知らない。

20分くらいしたときに、僕が気付いた。「フキー遅くない?」

フキーの恋愛の話で盛り上がってるのに、肝心のフキーが全然風呂から帰ってこないのだ。

僕が「ちょっと迎えにいこうかな」と言うと、離婚アーティスト小谷が「彼女と電話してんだよ。大変なんだから。ゆっくり電話させてやれよ。察しなよ。お前の悪いとこだよ」と。

僕も内心呼びに行くのが面倒だったこともあり、「そうね」と納得。またぐだぐだ話し始めた。

さらに20分ほど経過。フキーの事など忘れてフキーの話をしていると、突然すーさんが席を外し、どっかへ行った。僕らは相変わらず気にしない。

そしてしばらくすると、すーさんがフキーを連れて帰ってきた。すーさんは真顔、フキーはなんか不貞腐れた顔。

「お前どこ行ってたの?遅かったね」と言う我々に、衝撃の事実が明かされた。

フキーの修羅場

あの後風呂場を出て、一服しに宿の入り口まで行ったフキー。風に当たろうと自動ドアの先に行ったと言う。そしてタバコを吸い終え、戻ろうとしたら、自動ドアが開かないことに気づく。 どうやらオートロックになっていて、外から入るには鍵がないと自動ドアが開かない仕組みになっているらしい。

鍵穴はあるが、鍵はない。その脇に管理人室につながるインターホンを見つけたので、迷わず押す。しかし応答はない。

焦りが募るフキー。手元には財布も携帯も無い。夜なので辺りは暗いし、周りには店も何もない。漆黒の闇だ。

何度か管理人室のインターホンにチャレンジしたが、不発。一度だけ住人と思しき人がガラス越しに見えたので、ガラスをドンドン叩いてアピールするも、おそらく不審者と思われて無視された。

もう一度宿の入り口近辺をよく見ると、公衆電話があることに気づいた。財布も小銭も持ってないが、緊急ボタンから警察に電話ができる。少し迷ったが、思い切って警察にかけた。

警察の方に事情を説明するも、現在地の住所や場所を説明する情報、この宿が何という名前なのかもわからないフキー。最終的には「逆探知してください!」と悲痛な要望を伝えたところで、あれだけインターホン押しても出てこなかった管理人のじいさんが出てきた。慌てて警察に解決した旨を伝える。

管理人はなぜかキレていた。どうやら警察に電話したことにキレているらしい。会社に連絡がいったりすると厄介なのだろう。フキーもフキーでキレていた。何度もインターホンを押したのに全然出てこなかったくせに、なぜキレられなきゃいけないのか。

ぐだぐだ揉めているところに、すーさんが登場。フキーをなだめつつ、部屋に戻ってきた。

という顛末だった模様。フキーは相当消耗した顔つきになっていたが、僕らは涙が止まらないほど笑った。

俺らが楽しくお酒を飲んでる時に、フキーが必死にそんなことをしていたかと思うと、とにかくおかしい。

小谷理論。「フキーは彼女と携帯で話ししてる」という説だったが、僕らがお酒を飲んでるすぐ脇に、そこにいる誰のものでもない携帯がずっと置いてあったのだ。そしてそれはやはりフキーの物であった。ちょっと考えりゃわかるが、その時は誰も気づかなかった。

そして、やはり特筆すべきはフキーと「現地の方」との相性の悪さだ。とにかくどこに旅行行っても誰かと揉める。別に気が荒いとかそういうんじゃないんだが、とにかく旅行先で出会う人と相性が悪い。今回の場合は管理人のじいさんだった。以前の旅行では、スノボの板を山で失くしたフキーと宿のじいさんとの名勝負もあった。

最後にすーさん。やはり頼れる。すーさんがいなかったらフキーはずっと宿のじいさんとバトルをしていただろう。

あれから3年ほど経つ。フキーの恋愛はどうなったかというと、未だにその彼女と特殊な恋愛を続けている。僕らはというと、集まる度毎回フキーの恋愛の話をしている。