小田原に移住したよ。

小田原移住日記

唐突な転職で小田原に引っ越した男の顛末

小田原にある「更生保護法人 報徳更生寮」ってどんな施設?実際に行って話を聞いた

更生保護法人 報徳更生寮。寮から外の眺め。
報徳更生寮からの眺め

小田原にある「更生保護法人 報徳更生寮」って実際どんな施設なのか

先日、小田原移住仲間の元タンクトップ後藤氏に声を掛けて頂き、お茶畑の雑草取りのお手伝いをしてきた。自分も世の中的には要らない草、雑草寄りの人間なので、仲間を根こそぎ抜くのは心が引けたが、そこは雑草。茎の途中であっさり切れてしまい、根っこまでは中々きれいに抜けない。人間と一緒だな。ということを考えていたらアッという間に時間が過ぎた。

さて最近、とある事情により報徳更生寮という寮に興味を持った。インターネットで調べても、あんまり情報が出てこない。「犯罪を犯した人の出所後の生活をサポートする寮」ということは分かったが、それ以上が分からないので、行って聞いてみた。完全なるアポなし突撃だったが、事務員の方が快く対応してくれた。*1

同じくこの寮について知りたい人がいた場合、情報が無さ過ぎて困ると思うので、その人たちに向けて&備忘録として書く。

報徳更生寮の歴史

建物は10数年前に建て替えられて新しいが、この寮の活動自体は関東大震災の頃ということで、非常に歴史があるという。罪を償い出所しても、生活を構築できずに再犯してしまうケースが多々あるため、そうならないようにサポートする施設。この寮に住みながら仕事をして生活資金をため、自立していくという。寮の従業員は5名。入寮者は現在約25名(訪問時点)。小田原少年院があったから、若い人のための寮なのかと思いきや、多くは成人で、若い人は少数に制限しているとのことだ。

報徳更生寮の中を見学させてもらった

事務員の方に館内を案内して頂いたが、どのフロアも凄く手入れ、掃除が行き届いていて驚いた。風呂場もトイレもピカピカだ。聞くと、今入所されている寮生が自主的に掃除をしてくれているとのこと。管理人さん曰く、「トラブルメーカーがいて寮の雰囲気が悪いときは風呂場が汚くなる」という。見せていただいた風呂場は、めちゃくちゃピカピカだった。それに加えて、今の寮生は自主的に近隣のごみ拾いもやっているという。今は寮の雰囲気が良いらしい。

入寮者はトラブルを起こさないのか

この寮の入寮期間は最大でも6か月と短いため、人の入れ替わりは多い。寮の人が全国の刑務所に赴き、仮出所する方と実際に面談し、犯した罪の内容、集団生活ができるかどうかなどをチェックし、入寮を決めているという。勿論目利きは100%ではなく、集団生活になじめない人がいたり、ごく稀にではあるがトラブルを起こす人もいるという。寮のすぐ近場でのトラブルはさらに稀で、通常電車に乗ったりして多少離れた場で起こすという。トラブルの内容としては無銭飲食や盗撮などが主という。

トラブルの程度について、重大な事件は昨今起きていないとのことだ。ただ、昭和の終わりごろには、寮内で注意された入寮者が、その腹いせに近隣の民家に火をつけたということもあったという。

退寮後の再犯については、残念ながら少なくないとのことだ。元犯罪者が新たに落ち着いた生活を手に入れるのは大変なことなんだろうと思う。

寮の空き部屋を見せてもらい、ベランダに出る。外を見ると、目の前は既に役目を終えた小田原少年院。久野の山々も見える。良い眺めだ。

報徳更生寮での食事はどんなものか

食堂も案内して頂いた。寮生の方が2名いたので挨拶させて頂いた。食堂には立派なキッチンが併設されている。以前は寮の従業員に調理担当がいたが、辞めてしまったため、現在は業者に依頼しているという。1人あたりの1日の食事にかける金額は1,200円と法務省に決められているとのことだ。中々シビアな金額である。寮生はこの寮から仕事に出るため、昼飯は弁当を持たせてやりたいが、夏場で食あたりのリスクがあるため、弁当のかわりに現金400円を渡しているという。そうすると残りは800円。これを朝300円、夜500円に分けて、その予算でご飯を提供する。献立を見るとおいしそうな品目が並んでいるが、工夫と苦労の賜物だろう。

どのような犯罪を犯した人間が入所しているのか

率直に質問したところ、すんなり答えて頂いた。殺人や強盗などの重大犯罪を犯した人間は基本的には入所せず、軽微な犯罪を犯してしまった人が主。ただし、痴漢や性的ないたずらなどの性犯罪者が入所する可能性は「ゼロとは言えません」とのことだ。

前述のとおり半年程度で入所者は入れ替わるので、「今現在どんな犯罪歴の人が入所してるのか」というのを継続的に把握し続けることは困難だ。既に罪を償い出所してきた人をことさらに異物視するのも良くないとは思うが、「痴漢や性的ないたずら」に関しては結構問題が深い。入所者を物理的に制御する何かがあるわけではないので、近くに住んでいる小さなお子さんがいるご家庭は不安を感じる人もいるかもしれないし、その不安は合理的なものだと思う。

受刑者の出所後は民間頼み?

この寮を含む厚生保護施設は法務省から補助金を得ている。金額を調べたところ、少し古いが平成20年の資料を見ると年間約3千7百万円だ。
http://www.moj.go.jp/content/000024528.pdf
もっと手厚くならないものかと思う。そもそも民間業者に任せる事業ではない。しっかり公的に面倒を見るべきで、それができないなら十分な金額でフォローしてほしい。これも調べたところ職員の平均給与は22万円。ボーナス無しではワープアだ。ボーナスがあって、仮に年収400万円だとすると、5人雇って2,000万円。のこり1,700万円でこの特殊な寮を日々運営し、各地で面談をして入寮者を集める活動をしている。もちろんこの金額には食事代も含まれているだろう。到底利益目的で割が合う事業ではなく、公益性の強い取り組みであるにもかかわらず、冷酷とも言える金額だと思う。犯罪を犯した者のためではなく、再犯によって将来傷つく人を減らすことが重要なので、出所後自暴自棄にならないよう、税金使ってキッチリ仕組みを作ってほしい。

寮内の壁に巨大なアシダカグモを発見したときは心臓止まるかと思ったが、それ以外にはトラブルなく見学終了。

まとめ

まとめるとこんな感じ。

  • 更生保護法人 報徳更生寮は犯罪者の社会復帰を応援する寮
  • 民間団体が国から補助金をもらって運営している
  • 入寮中のトラブルはごく稀
  • 退寮後の再犯率は高い

行って見るまでは「元受刑者が沢山いるなんて怖いな」と思ったが、実際見て話を聞くと、やれることは最大限やって運営されていると感じた。ただ、食事の予算や、職員の人数を見るに、お金が足りなそうだと感じた。お金が足りなければ管理すべきところも疎かになる。

一度犯罪を犯した人間が、出社後に生活がままならず自暴自棄になった場合、まっとうに生きている人間が結果的に傷つくことにつながる。きちんとリスタートできる環境を提供することを民間に丸投げするのではなく、国や自治体が主導権を取って、予算を付けて仕組みを作ってほしい。

*1:通常この対応をして頂けるとは限らないので注意