やさぶろばさ
昔は,新潟の山奥に住んでいるじいさん(母方)の家によく遊びに行った。
初孫だったこともあり,相当かわいがられてた記憶がある。
そんで,そのじいさんは俺が夜遅くまで起きてるとやさぶろばさが来て,
連れてかれっちまうぞ~」と言った。
そのときは,小学校低学年くらいかな。
バサってのが婆さんっていう意味なのは知っていたから,
「それはどんなバサなの?」と聞くと,正確には覚えていないが
「山姥(やまんば)」と同じようなイメージを持った記憶がある。
髪がぼさぼさで凄く怖い顔をしていて,子供を食べちまうとのこと。
子供を寝かしつける為のべたべたな話しではあるが,
実は少しだけ怖かったのも覚えてる。
今になって,ふいに「やさぶろばさ」が気になった。
そもそも,「やさぶろ」ってなんだよ。インターネットで調べてみると,
「やさぶろ=弥三郎」ということが分かった。
弥三郎さんちの婆さんって事だ。
色々な伝説が残ってて,主要なのは大別して以下の二つ。
1,弥三郎さんが山でオオカミに追われて,木の上に逃げる。
それ以上追えないオオカミは,「弥三郎婆を呼ぼう」と言う。
やがて,オオカミは世にも恐ろしい山姥を連れてくる。
婆は木に登ろうとするので,弥三郎は持っていた鉈で斬りつけると,
婆は逃げていく。
家に帰ると,自分の母が同じ箇所を怪我していて,
山姥は実は母親だったと知れる。
(イロイロな説あり:腕を切られる,額を切られる等)
2,親切にしてくれた若者に,嫁を連れて来る。
(連れてこられたのは大阪の長者鴻池家の女。二人は結婚し,
「大阪屋」という屋号で酒造を営み,大金持ちになる。)
この二つに共通するのは,共に婆は人を食う鬼婆だということ
(2でも,最初は若者を食べようとしている),
名前が弥三郎婆だということである。
他は大きく違っていると言える為,恐らく2つの伝説が,
少ない共通項でくっついたと思われる。
2は,大阪屋のサクセスストーリーという意味合いが強い。
1は,変形し,様々な県(特に東北地方)で確認されている。
何か実際起きた事件の隠喩だったりしないのかなあと思ったりする。
例えば,山奥で暮らしている老婆と息子。息子はあるとき,母親を殺してしまう。
それを妖怪のせいにしてみた・・・とか。
2だったら,大金持ちになった男が,女性をゲットするために暴力的手法を使った隠喩・・・とか。
なんか妄想が膨らむけど,こういうのを考えるのも,ナカナカ楽しい。
書いてて思ったけど,じいさん亡くなった風だね。
まだ健在ですから。
うまい米作ってます。