小田原に移住したよ。

小田原移住日記

唐突な転職で小田原に引っ越した男の顛末

世界一臭い食べ物「シュールストレミング」との対決

世界一臭い食べ物を食べる

世界で一番臭い食べ物。それがシュールストレミング。ニシンの塩漬けを発酵させたもの。スウェーデンの缶詰。

 

それを会社のベテランの大先輩が入手したとのことで,河原で空けてみる大作戦が,土曜日に決行された。場所は橋本駅からバスで20分ほど行った,相模川の河川敷。都心からちょっと離れただけとは思えないほどの自然。木々に囲まれて,川は流れ,天気も良く,気持ちが良かった。

 

会社の人,OBが20人くらい来た。偉大なる編集者OBと年始のスキー旅行以来で会えて嬉しかった。最初は芋煮を作ったり,サンマを焼いたり,腹ごしらえ。先輩が子供を連れてきてたので,肩車して遊んだ。

 

そして,和やかな時は過ぎ去り,いざ戦いの場へ。臭い缶詰開封特攻隊長に任命された俺は,用意した「捨てても良い格好」に着替える。そして,石の上にスタンバイ。カッパ係がカッパを忘れた為,生身で挑む。

 

テレビやyoutubeで見た「開ける人」は,ゴーグルを付けていたけど,それも無し。開封時はくさやの8倍,失神する人もいるといわれるその臭気に挑んだ。

 

遠巻きに見守る会社の人々。もっと近くに来てくれないか。と言う間もなくカウントダウンが始まる。「10,9,8・・・」「0!」で勢いよく缶切りを突き立てた!プシューという音を立てて,勢いよく白いしぶきが飛び出る。顔の右半分にひっかかる。一歩遅れて強烈な臭いが。

 

くくく,くっせーーーーーーー!!!

 

店主が孤独死した山の上の魚屋in真夏というような臭い。完全に腐ってる。キングオブ腐敗臭。

 

あまりの臭いに苦しみもがく俺。10メートルほど離れたところから眺める会社の人々。

「あんまり臭ってこないよ」と言い出した。そんなはずあるか!蓄膿か!

 

「じゃあもっとこっち来てくださいよ!」と言ったら,何人かが恐る恐る俺と缶に歩み寄る。そして缶に近づくと,クサイクサイの大合唱。どうやら俺のいるほうが風下だったらしい。

 

それにしてもスゲー悪臭だ。こらえながらも缶きりで,キコキコ頑張って開けた。

中には,誰がなんと言おうと腐ってる魚の御姿。でろんでろん。

 

一番驚いたのは,空けてまもなく,どこからともなく,たくさんのハエが飛んできたこと。やっぱり君らの食べ物だと、俺も思う。

 

とはいえ,人間様として,虫に負けるわけにはいかない。勿論,食べましたよ。食べましたとも。あらかじめ切っておいたパンに乗せて。ニシンのお腹に宿ったからには数の子になることもできたのに,道を踏み外した卵達が腹に格納されていた。切り身と一緒に、あらかじめ切っておいたパンに乗せ、口の中へパイルダーオン。

 

・・・正直,食えなくもない。

 

でも,口の中で,やっぱりあの臭いが広がって,美味しくはない。それは間違いない。

 

隣で食べてた会社のおばさんは「うまいうまい,積極的にうまい」と言っていた。その他の人々の意見を集約すると,以外にもマズイ派6:ウマイ派4という割合だった。ほんとに?強がってないですか?

  

顔に引っかかった腐敗汁を落とすべく,川でジャバジャバ顔を洗ったんだけど,眉毛かまつ毛のどっちかの臭いが落ちなかった。

 

顔を洗ってると,「泳ぐの?」という、いわゆる無茶ぶりを先輩より頂戴した。嗚呼この期待を裏切れない体質の悲しさよ。颯爽とはためく「遊泳危険」の旗印。一応指差し、あれが・・・と言ってみたのが最後の抵抗か。

 

服を脱ぎ、パンツ一丁。そして入水。顔洗ってたから気付いていたけど、水はキンキンに冷たい。他に泳いでる人なんか誰もいないし、孤独なスイミン。すぐ上流にあるダムの底から、冷たい水が放流されているということだ。冷たいわけだ。

 

ちょっと泳いでみたら、川の真ん中くらいまではどうやら浅い。足が付きそうだ。

ざぶざぶ歩いて中州を目指す。川底の石には藻が張り付いていて滑る滑る。

コケそうになりながらも、なんとか中州に到達。皆のいる岸に向かってガッツポーズをしたら、どうやら盛り上がってる様子。良かった良かった。

 

中州の先は深くなっていた。楽しくなって、しばらく泳いで岸に戻った。怪獣のイメージで子供に「がおー!」と言いながら上陸したら、先輩の子供がわいわい喜んでくれてたのでよかった。でも、おっちゃんはマジで寒かったんだぞ。

 

公共の乗り物を使用する事が躊躇われるよな仙水忍ばりの聖光気(腐敗臭)を身にまとい、堂々の帰宅。