小田原に移住したよ。

小田原移住日記

唐突な転職で小田原に引っ越した男の顛末

UFC JAPAN 2013

3月4日,UFCジャパンを見に,埼玉スーパーアリーナへ行ってきた。

第1試合に韓国人の選手が物凄い膝蹴りでTKO勝ちをし,

盛り上がりそうな予感を感じるも,その後なんと第9試合までが判定決着。

しかも,お互い攻め合った結果というより,お見合いだったり,寝技の膠着だったり,

あまり燃えない試合が続いた。

UFCでは連敗がクビにつながるため,「負けない」試合をする選手が多いとのこと。

それでも,日本人選手はもっと勝負して欲しかったし,もっともっとアグレッシブに行って欲しかった。

完全に押さえ込まれた廣田選手のように,相手の技術レベルが高いというのは勿論大きいと思うけど。

そんなイキたいけどイキきれない空気を完全に払ったセミとメイン。

セミはステファン・シュトループ対マーク・ハント

シュトループが身長213cm。ハントは178cm。

身長差はあるけど,ハントはのっそのっそと近づいていき,

ボディやローを中心に先手をとって攻める。

K-1時代と同じように,パンチを食らって少し下がっても,

暫くするとまたゆっくり相手を追い回す。

途中マウントを取られたけども,しっかりディフェンス。

最終的には強烈な左フックでシュトループをふっとばし,KOした。

次はJDS戦かな。今回出場した選手の中で一番タイトルには近い。

頑張れ!

そしてメイン。シウバ対スタン。

大学生の頃,桜庭対ホイラーを見て格闘技を見始めた僕は,当然のように桜庭ファンとなった。

だから,シウバに桜庭が負けたときはとてもショックだったし,シウバを嫌いになった。

ガイメッツァー戦の頭突きで,「狡い!」と思っていたこともある。

シウバが桜庭に2度目の勝利をした翌日か翌々日,

「桜庭,何故負けた」的な悔しい気持ちを引きずったまま,大学の友達と新宿を歩いていた。

新宿アルタ脇の歌舞伎町に繋がる道の入り口。

八百屋の前に外国人5,6人の集団がいて,その脇を通り過ぎた。

その中に,なんだか見たことのある顔を見つけた。

なんと,ヴァンダレイ・シウバだった。

シュートボクセの集まりだろうか。みんな怖そうだし,ごつい。

しかし,シウバのごつさはさらにその数段上であった。

昔の家の柱みたいな体幹と,丸太のような腕。

後頭部の入れ墨。間違いなし。

思わず一緒にいた友人に「おい!シウバだよ,ヴァンダレイシウバ!」と言うも,

格闘技に興味が無い友人はポカーン。

そのまま横を通り過ぎ,暫く行ったところで立ち止まって,

集団を振り返ってみると,シウバがじっとこっちを見ている。

目があった,と思ったら,なんとシウバが両手をあげて手を振ってくれたのだ。

横を過ぎる時から「しうばしうば」と言っていたので,多分声が聞こえていたのだろう。

僕も思わず,「おー!」と両手を挙げてしまった。

前夜にボコボコにされた桜庭に対してすまない気持ちになると同時に,

「シウバめっちゃ良い奴だな」と思った。単純。

その後,日本の格闘技ブームの流れの中で主役級の活躍を続けるも,

PRIDE終了後はUFCに移り,あまり良い結果が出ていなかったシウバ。

そのシウバの日本凱旋試合。

入場はdarudeのsandstorm。会場の盛り上がりは半端じゃない。

PRIDE終了後に海外へ出て行った選手達は軒並み苦しんでいる。

あれだけ強かったヒョードルが連敗,ノゲイラもフランクミアに腕を脱臼させられ,

ショーグンはジョーンズにボコボコにされた。

PRIDE絶対王者と言われたシウバも,勝ったり負けたり。

日本で格闘技が盛り上がっていたときの選手が,

競技として進化していくMMAの波にのまれていく。

その頃を知る格闘技ファンの人達は,

それを「仕方ない」と思いながらも,悔しい気持ちがあったと思う。

相手はブライアン・スタン

TUF出身のストライカーで,WECのチャンピオンにもなっている選手。

UFCのタイトルには縁が無いものの,今のシウバにとって,「まあ普通に勝てるでしょ」とは言えない相手だ。

試合は最初から殴り合い。ここまでの試合とは,別の競技のよう。

シウバもスタンも正面からガンガンに殴り合う。

正面の相手の首を掴んで片手でゴツゴツ殴り合うなんて場面が,

2013年のMMAで見られるとは思わなかった。

後でWOWOWを見たら,ゲストの福山雅治が「ドン・フライ対高山ですね」と言っていたけど,

まさにそんな感じ。

お互いに腰が落ちる場面を作り作られ,1Rが終わる頃には両者の顔面は血まみれ。

そして2R。1Rと比べると静かに始まったものの,時折ある打撃の交錯で,

次の瞬間には試合が終わりそうな緊張感のある展開。

そしてついに,シウバがPRIDE時代の様なフックのラッシュから,パウンドを落としてTKO.勝ち。

歓声はこの日一番。会場がマジで揺れた。声出し過ぎてクラクラした。

シウバは10年前と同じように,こっちをみて両手を突き上げていた。

ちょっと泣きそうになった。

仕事やプライベートにおいて,ささやかながら人生の岐路に立つことがある。

場合によっては,その決断によって逆の天秤に乗ってる可能性を永遠に失うことになる。

年齢を重ねることで,そのリスクに自分が耐えられるか不安になり,

進むも退くもせず,その「決断」そのものについて思考と時間を重ねる。

36歳になったシウバが,昔と変わらぬアグレッシブファイトをしているのを見た。

もしかしたらぶっ倒されてしまうかもしれない。それでも一歩前に出て,相手をぶっ倒すため殴り合う。

ノスタルジーとは違う。

今のシウバが,倒すか倒されるかの試合を見せてくれたのが嬉しかったし,勇気づけられた。

ブライアン・スタンも本当に素晴らしかった。

現地で見たときはお互いに先手を取りあっている印象だったけど,

WOWOWで見返してみると,先手は主にスタンが取っていて,

シウバはカウンターを狙っている。

そういや,シウバは昔からカウンターを狙いすぎて,手数が出ないこともあった。

今回こんな凄い試合になったのは,ブライアン・スタンが勇気を持って打ち合いを仕掛けたからというのが大きい。

もちろん,そこに勝算を感じた上での戦術だとは思うけども,

あの不格好なまでの殴り合いからは,それを超えたものも感じた。

スタンは日本の総合格闘技,シウバが日本で築いた歴史も一緒に相手にしてたような気がする。

ナイスファイト。

終わった後は,七厘で焼肉食べて,秋葉原で2軒ハシゴして帰宅。

遊んだ!

追記:ふとブログの中身を「シウバ」という単語で検索してみたら,結構たくさん出てきた。自分の記憶よりもシウバを応援してて面白い。ブログも残しておくと楽しいなあ。

KAMINOGEの桜庭とシウバのインタビューは,お互い認め合っている雰囲気が伝わってくる,良い記事だった。