何も考えず,最低
「糞の役にもたたん。」っていうのが,口癖になって何年経つだろうか。
我ながら,いざ文字にしてみると,凄く下品な言葉です。
この言葉を丁寧にしてみた。
「これは大便を排泄するには使えません。」
(「大便の役には立ちません」は,うんこに一人称を与えるので却下)
オカシイ。うんこをするのに道具は必要ないはず。
強いて言えば肛門括約筋だろ。
でも,仮に肛門括約筋を指すとすると,これまたオカシイ。
肛門括約筋の使用方法=うんこだからである。
この文は,本来うんこを出す為に使われないものを,
うんこを出す為に使おうとして「あ,やっぱダメだ」という意味だ。
つまり,初めからうんこに使うべき肛門括約筋では,話が通らない。
肛門括約筋を痛めた(痔等)場合に,
お医者さんに「ああ,この肛門括約筋は大便を排泄するのには使えません。」
と言われてしまったら,「他に使い道はありますか?」と言いたくなってしまう。
この文が示す物(これ)は,うんこに使えそうで使えないという,
非常に繊細な物を指さなくてはならないのだ。
それは,形かも知れないし,効能かも知れない。
どっちかだ。
一つシチュエーションを考えてみた。
あるところに,小学4年生のはじめくんという男の子が,
お父さんと2人で住んでいました。
はじめくんのお父さんは,根っからの便秘持ち。
お母さんは,そんなお父さんに愛想を尽かし,
先月実家に帰ってしまいました。
2人暮らしにも慣れてきたある日曜日,
はじめくんとお父さんは,いつものように2人でお昼ご飯。
お父さんは料理がとても得意。
今日も美味しいものを一杯作ってくれました。
「いただきまーす。」二人の会話も弾みます。
はじめくんは学校の不良グループを懲らしめた嘘の話をし,
お父さんがお母さんの悪口を一通り言い終わったその時でした。
「ぐあっ」
お父さんが変な声を出したかと思うと,
急にお腹を押さえてうずくまってしまいました。
はじめくんは驚いて「どうしたの!?」と聞きます。
お父さんは,苦しみながらも平静を装い,
「いいか,はじめ,今から言うとおりにするんだ」と言いました。
はじめちゃんは,うんうんと首を振ります。
「や,やっきょくで,これを,これを」というと,
置いてあった紙に,鉛筆で「浣腸」の絵を,それはそれは見事に描きました。
はじめくんは「わわわかった!」と言うやいなや,
お父さんの財布と紙を持って駆け出します。
「急がなきゃ!」
はじめくんは走ります。
途中で何度も転びました。
薬局に着いたときにはもうぼろぼろでした。
必死でお父さんの描いた絵を,薬局のおっさんに見せました。
「ああ,コレね!」
おっさんから「浣腸」の箱を受け取ると,
はじめくんは一目散に家に駆けていきます。
そうです。万引きです。
おっさんは途中まで走って追いかけましたが,
日頃の不摂生のせいで,遂には追いつけませんでした。
(被害届は出しました。)
家に着くと,お父さんはトイレの中にいました。
「はじめ,はやく,はやくそれをくれ。」
はじめくんは,手に持った箱を急いでお父さんに渡します。
しかし,事実は小説より奇なり。
はじめくんが薬局だと思ったのは,実はお花屋さん。
薬局の店長が渡した物は,「浣腸」では無く,
観葉植物の肥料だったのです。
こんな悲劇がありますか?
お父さんは一瞬安らかな顔を取り戻すと,
首を左右に振りながら言いました。
「これは大便を排泄するには使えません。」
最低だな。